はいみどりの世界

すてきな記憶を忘れないために

たまこラブストーリー(1) フルーツ牛乳が気になる

 

f:id:haimidori:20200503181012j:plain

第18回メディア芸術祭アニメーション部門において、京都アニメーション制作による映画「たまこラブストーリー」の山田尚子監督が新人賞を受賞されたことを心よりお祝い申し上げます。
たまこラブストーリーは、2014年4月26日に劇場公開され、筆者も公開初日の新宿ピカデリーでの山田監督、および主要なキャストの皆さんの舞台挨拶回に参加してきました。
その日は、この映画本編において、別記事に上げたように、例のコーヒーカップが登場してはいないかを注視していました。星とピエロの店内のシーンが上映中何度か出て来たときはその度に緊張しました。カウンター内のガラスの食器棚の中に、それらしき色のカップがかすかに見えましたが、結局それだと確定するまでは至りませんでした。
ところで、この映画の中で、もち蔵がうさ湯で牛乳(あるいは牛乳の一種)を飲むシーンが出て来たときに、壜(びん)の中身とその壜に描かれた文字がすごく気になりました。その牛乳壜はこちらです。

 

f:id:haimidori:20200503181036j:plain

筆者は、映画を見ているあいだもずっとこの牛乳壜の中の液体の色が気になってしょうがありませんでした。それはフルーツ牛乳ほどはオレンジ色ではなく、若干黄色っぽいかな程度の白色で、やはり牛乳だったのではないかなと当時思いました。
映画を観ながら、以前、スタジオジブリの作品の「千と千尋の神隠し」の上映時やそのディスク化において作品全体が赤みがかった色となっており、その色は間違って色調整されたのではないかとの疑いが持たれたことをすぐ思い浮かべました。このたまこラブストーリーの作品でも同じように誤って牛乳本来の白色が少し黄色みがかった色になってしまったのではないかと。
当時、私のように牛乳壜の絵柄に気付かれたツイッターのフォロワーさんもオリジナルは貝瀬牛乳(正確には(有)貝瀬ミルクプラント、以下、貝瀬牛乳と記す)であるとすぐ特定されておりましたが、ネット上で調べてみると普通の白い牛乳では壜の文字色は劇中と同じ緑色でしたが、一方、フルーツ牛乳の瓶の文字色はオレンジ色で劇中とは異なっていました。
その後、筆者は何度か映画館で観賞しましたが、この牛乳壜の中の液体の色は上映館が変わっても、同じような色味でした。
10月に再々度の新宿ピカデリーでの山田監督、キャストの皆さんが再び挨拶する日も筆者は上映に参加しました。上映に先立ってBlu-rayディスクを1階ロビーで先行発売されていたので早速購入しました。上映終了後、会場のロビーにマニュアル・オブ・エラーズのメンバーの方がいらっしゃってるのをお見かけし、ディスクのジャケットにたまこまーけっとED曲の「ねぐせ」の作曲の山口優さんのサインを頂きました。筆者は「ねぐせ」が大好きなんです。

 

f:id:haimidori:20200503181103j:plain

夜、自宅に戻り、早速このもち蔵が牛乳を飲むシーンをBlu-rayを再生して確認してみました。牛乳壜の中の液体の色ははっきり普通のフルーツ牛乳のようにオレンジがかった黄色になっており、そして、壜に描かれた文字にも「フルーツ」という文字の一部が見えました。また、映画館ではよくわからなかった牛乳壜の蓋にも、フルーツ牛乳と描かれていました。(*注1)
映画のスチールが手元にあるわけではないので100%確信を持っているわけではありませんし、映画館や席の位置によって見え方が多少異なっていたかもしれませんが、筆者は新宿ピカデリーで複数回、さらに横浜ブルクでも観賞しましたがいつも同様に見えましたし、私以外の方も牛乳壜の中の液体の色については、私と同じ見え方をしたとの感想を得ていますので、見間違いではないと思っています。
おそらくディスクの製作に当たり、この液体の色を手直ししたのではないかと思いました。よく、TV放送では放映後、ディスク化される際にいろいろ手直しがされたりしますが、今回もそういうことが行われたのではないかと思います。
という訳で、もち蔵が銭湯で飲んでたのはフルーツ牛乳ということで間違いないことが確認できたことになりましたが、そうなると壜の文字色がフルーツ牛乳のものではなく、普通の白い牛乳が入っているものを使っていることになり、なぜそうなのかが気になります。

 

 

テレビシリーズでは、第1話のAパートと第12話(最終話)のBパートにうさ湯でフルーツ牛乳が登場します。
こちらではいずれもネットで見つけたフルーツ牛乳の壜と同様にオレンジ色の文字で書かれているのが見えます。
一方、この記事の最初に置いたたまこまーけっと2014年版11月12月のカレンダー画像は、この第12話(最終話)をモチーフにしていますが、このカレンダー画像では意図的なのか、文字の部分が全く見えません。

こうなると、この緑色の文字の牛乳壜のフルーツ牛乳が存在しているのかをこの目で確かめたくなり、群馬県沼田市までクルマで行くことにしました。ネット上で調べると、数年前の情報でしたが、JR沼田駅前の「ヤマザキYショップ想いで」さんで販売されているとのことだったので、まずはそこへ行ってみることにしました。

 

f:id:haimidori:20200503181147j:plain

お店に入り、早速、飲み物の陳列棚の有りそうなお店の奥の方へ向かうと、あのキューピーのようなカワイイ顔の絵が描かれた牛乳壜が目に飛び込んできました。

 

f:id:haimidori:20200503181218j:plain

思わず、「あった、あった」と声に出してしまいました。そこには、あの緑色の文字色の牛乳とオレンジ色の文字色のコーヒー牛乳がいっぱい並んでいました。でも、フルーツ牛乳は見当たりません。

 

f:id:haimidori:20200503181253j:plain

とにかく、まずはこれら2種類の牛乳壜を確保しようと、2本ずつ計4本をレジのカウンタに置いて、お勘定をお願いしながらお店の方に
「『フルーツ牛乳』はないのでしょうか?」
と訊いてみました。
お店の若い女性の店員の方は
「ないんですよね?」
と隣にいたこの方の祖母?に確認をされると、その方が、
「1年半前まではあったんだけど、今はもうないんです。フルーツ牛乳の原材料を作ってた大阪の会社が製造をやめてしまったので、作れなくなったと(貝瀬牛乳さんから)伺ってます」
と教えてくれました。
もう、手に入らないのか…。少し落胆しつつ、筆者はずっと気になっていた今回の目的の質問をしてみました。
フルーツ牛乳の瓶の文字の色はどうだったでしょうか?緑色のものはあったでしょうか?」
おばあちゃん(60代くらい)は、
「オレンジ色のこの壜(コーヒー牛乳)でしたね。緑色のこちらの壜(普通の牛乳)ではないです」
と目の前の牛乳壜を見ながらきっぱりと答えてくれました。

  

f:id:haimidori:20200503181326j:plain

筆者は、お腹が空いたので、このおばあちゃん手作りのおにぎりをお店の中の飲食コーナー(お店の中で買ったもの限定で利用可)で食べました。暖かいお茶も用意されていて、さらには、漬け物まで頂いてしまいました。どうもありがとうございます。

お店で買った牛乳壜と冷却用の氷を持参したクーラーボックスに詰めて、今度は、製造元の貝瀬牛乳の所在地を見に行くことに。
駅前から急な坂道を昇りきると、そこには沼田の市街が広がっていて駅前とは随分異なる風景に驚きました。そして、カーナビに住所を入力し指示に従ってとある住宅の前に到着。

 

f:id:haimidori:20200503181353j:plain

ちょうど、保冷庫の前で作業されている方がいたので、声を掛けてみることに。
「こんにちは、ちょっとお聞きしたいのですが...」
フルーツ牛乳をやめた経緯を伺いましたが、駅前のお店で伺った話の内容もそのニュアンスも全く同じでした。この方が先ほどのお店で説明されたんでしょうね。
「原材料も手元に在庫があるあいだは(フルーツ牛乳の製造を)続けてたんだけど、それもなくなって...」
牛乳壜に入った牛乳のこと、フルーツ牛乳の分量(180cc)のことなどいろいろ笑顔で教えていただきました。
すでに壜牛乳は手に入っていたので、ネットで見た500mLの牛乳パックがあるかどうか訊いてみました。
「ありますよ、1Lのなら。」
昔は、お年寄りが1人で飲むのに500mLのがちょうどよかったみたいだけど、最近は若い人が顧客として増えていて、1Lサイズの方を求めるので、そちらだけになってしまったということでした。
本当に気さくで笑顔の素敵なご主人(70歳を過ぎたくらい)でした。1Lのパックを購入したい旨伝えると隣接する自宅内にいらっしゃった奥様をお呼びになられて、奥様手ずから保冷庫の中から1本取り出して渡してくれました。
ネットで見た通りに、大きなキューピーぽいカワイイ顔が描かれた紙パックでした。

  

f:id:haimidori:20200503181416j:plain

やっぱり実物はいいですね。350円を支払ってそこを後にしました。自宅には、「貝瀬○○」の表札がありましたので、あのおじいさんは貝瀬という名字らしいですし、会社の名前もそこから取ったもののようです。

  

f:id:haimidori:20200503181436j:plain

敷地の入り口にあった昔の門のなごり(「貝瀬牧牛園」と書かれている)

午後4時半に沼田を出発し、自宅に帰り着いたのは、午後8時になってしまいました。
早速、買ったものを並べてみます。

 

f:id:haimidori:20200503181502j:plain

そして、まずはコーヒー牛乳を飲みました。
次に牛乳も飲み、これらの瓶をきれいに洗いました。

 

f:id:haimidori:20200503181519j:plain

つぎにフルーツ牛乳を入手しようと近所のコンビニを3店舗回りましたが見つかりません。

  

f:id:haimidori:20200503181621j:plain

沼田駅前のヤマザキYショップ想いでさんにたくさんあったフルーツ・オレ(沼田の方はフルーツ牛乳好き?)
沼田の駅前の牛乳を購入したあのお店には明治のブリックパックのフルーツ・オレ(*注2)がたくさん販売されてたので、どこでも買えるとタカをくくって買わなかったことを少し後悔しました。

 

f:id:haimidori:20200503181648j:plain

次の日の朝は前日買ったキャンベルのクラムチャウダの缶詰と購入したパックの牛乳でクラムチャウダを作って食べました。

そして前日見つけられなかったフルーツ牛乳を入手する方法をネットで探し、そう遠くない場所に明治の牛乳販売店を見つけて、ここならたぶんあるだろうとすぐさまお店まで行くことに。
日曜日だったので、お店が開いているかどうか気になっていましたが、ちょうどお店の前に牛乳を配達するためのカゴを洗ってるご主人らしき方を見つけ、
フルーツ牛乳ありますか?」
と訊ねると、
「あるよ」
っていいつつ、お店の中に入って、お店の中の大きな保冷庫を開けて、中に入って、ブリックパックのを2個出してもらいました。
「瓶のものってありますか?」
とさらに訊ねると、
「ちょうど銭湯に配達しちゃったところだけど、1本だけならあったかな」
と言いながら、目の前の籠に入っていた1本取り出して、渡してくれました。

 

f:id:haimidori:20200503181716j:plain

筆者が代金を支払う段になって、財布を忘れたことに気がつき、一旦自宅へ戻り、再びお店に行き、今度は、落ち着いて別の質問を。
「牛乳壜のかたちでの販売は今でもあるんですか?」
「銭湯とか、そういうところ向けにはやってるよ」
「牛乳壜に紙の蓋が付いてるのはありますか?」
「それはもうずっとないね、(無くなってから)20年は経つかな」
明治の牛乳壜の蓋はプラスチックでできており、開封後もそれを再度キャップのように付けることは可能で、この蓋を付けて、明治の牛乳製造工場へ送り、蓋はプラスチックの材料に、瓶は洗浄して再利用されるとのことです。

  

f:id:haimidori:20200503181746j:plain

ダメもとで更に訊いてみる。
「紙の蓋を開ける道具、なんて言うのかわかりませんが、それは有りますでしょうか?」
「あるよ」
と言いつつ、近くの引き出しの中を探し始めるご主人。棚の一番下に同じ形、色の、先が尖った金属のものが10個くらい出て来た。
「ほい」
って筆者にたくさん渡しつつ、
「『キリ』っていうんだよね。」
言われてみればそうだったような。

 

f:id:haimidori:20200503181805j:plain

これって、全国共通な名称ではないような気がしましたが実際どうなんでしょうか。
「この先の尖った部分を輪っかのようなかたちで囲むようなタイプのものって有りますでしょうか?」
さらに訊いてみた。
「それは、私がこの商売を始めたころ、30年以上前にはあったけど」
と答えられる。
という訳で、輪っかの付いたのはありませんでしたが、この『キリ』4個も頂きました。
これを使って、家にまだ未開封の2本の牛乳が開けられるなと考えつつ家に戻りました。

家に戻ると早速、次の作業。購入したフルーツ牛乳(フルーツ・オーレ、ブリックパック)を昨日洗っておいた牛乳壜に移し替えて、「貝瀬牛乳版(レプリカ)のフルーツ牛乳」を2種類作ってみました。
昨日、飲んだ牛乳の蓋とビニールも被せて。牛乳壜の蓋は、洗って乾燥させてあったものを使います。

 

f:id:haimidori:20200503181826j:plain

映画の色味が正しかったかどうかを比較するために、通常の牛乳を横に並べておいてみる。
やはり、映画ではこんなに濃い色の液体ではなかったと改めて思います。BDリリース時に修正されたんだろうと確信しました。
さて、このフルーツ牛乳を飲むために、頂いたばかりの『キリ』を使って紙の蓋を開けようとしましたが、うまく紙の蓋を貫通できない。
無理に押そうとすると、蓋が牛乳壜の中に入ってしまいそうになったので断念して、蓋を指で一旦はずし、蓋を手に持って、『キリ』に力をいれてようやく刺さりました。

 

f:id:haimidori:20200503181850j:plain

そしてもち蔵のようにこの牛乳壜でフルーツ牛乳を飲み干しました。
筆者はフルーツ牛乳は結構好きなんですが、しばらく入手できない時期がありました。が、最近は徐々に扱っているお店も増えてきているようです。その1つの要因は、少し前に公開された『テルマエ・ロマエ』という映画のなかで主人公のルシウス(阿部寛)が銭湯で美味しそうにフルーツ牛乳を飲むシーンが出てきたからではないかと思います。ネット上では、このフルーツ牛乳が公開時に人気が出たことが散見されます。
さらに、今度はまだ未開封の壜入りのコーヒー牛乳を飲むことに。
再度、頂いた『キリ』を使って開けてみることに。

  

f:id:haimidori:20200503181939j:plain

今度はあっさり刺すことができました。
牛乳壜に本来付いている状態では紙の蓋に適度な湿り気があり、うまく刺さるのだなと感心しました。
「ぱくっ」という懐かしい音とともに、蓋をはずし、壜で飲みました。コーヒー牛乳も久しぶりです。
独特の甘さがなんとも言えないですね。

前述の『テルマエ・ロマエ』では、ビニールのカバー越しに、『キリ』を使って、しかも、開けた蓋を外さず、2本続けて開けるというシーンが登場しますが、その開け方の手際良さも映画の演出のこだわりなんだろうなと思いました。この開けるときの音が気持ちよかったです。

フルーツ牛乳へのこだわりは、おそらく山田監督の嗜好に基づいているものなんだろうなと思いつつ、なぜ、貝瀬牛乳が登場してきたんだろうかと。『テルマエ・ロマエ』で使われたフルーツ牛乳はかわいい牛のマークが描かれたものなんですが、同じようなものを登場させるのではなく、別のものを考えたときに貝瀬牛乳のものが頭に浮かんで来たのではないかと思います。それは監督が群馬県出身であることに関係があると思います。おそらくはこのフルーツ牛乳を昔、飲む機会があって、しかもそれがお気に入りだったので登場させようと考えたのではないかと思います。
TVシリーズの製作時(2012年後半)にはまだ入手可能だった貝瀬フルーツ牛乳は、映画の製作が始まろうとしていた頃(2013年夏頃)には入手することはできなくなっていたと思われます。

では、なぜ、TVシリーズのように本来のフルーツ牛乳の壜ではなく、牛乳の入っている方の壜を使ったのか。
この理由は解かりませんが、初めて映画を観たときの印象でもそうでしたが、「みどり」色にこだわった結果だったのではないかと筆者は思っています。藤森の疎水沿いの桜の木の新緑や、「みどり」ちゃんの想いとかこの映画は「みどり」にこだわったものなんではないかと感じています。

 

f:id:haimidori:20200503182004j:plain

*1「フルーツ牛乳」とは、あくまで通称であり、正確には「フルーツ入り乳飲料」と呼称されます。「牛乳」は生乳100%でなければ牛乳と表示してはいけないのでこのような名称になっています。したがって、キャップや壜にフルーツ牛乳と書いてはいけないことになります。
*2 明治の「フルーツ・オレ」(通称:フルーツ牛乳)は「清涼飲料水」というカテゴリーに属します。
貝瀬ミルクプラントのフルーツ牛乳(通称)は、購入したコーヒー牛乳(フルーツ牛乳と同様に通称です)と同じ「乳飲料」というカテゴリーに属しています。
(2014年11月22日、23日撮影)
(記事中のカレンダー画像の版権は、京都アニメーション/うさぎ山商店街に所属します)