はいみどりの世界

すてきな記憶を忘れないために

映画「君の名は。」舞台挨拶レポート

 

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新海誠監督舞台挨拶レポート (2016年8月26日 於TOHOシネマズ新宿SCREEN9 09:30の回上映後)

(この内容については筆者が自分のメモ書きをもとに書き起したもので、内容については若干不正確な部分があるかもしれません。本文中には表現が微妙に異なったりしている部分があるかもしれませんが、ニュアンスの大きな間違いはないと思っています。もしも、間違い等ございましたら、ご連絡等頂けると有り難いです。また、ネタバレ要素を含んでいますので、未観賞の方は観賞後にお読み頂ければと思います。直接的なネタバレにならないように表現を簡略化したりしてわかりにくくなっているところもあります。ご理解頂ければと思います。)

(後半部に川崎での簡単なレポートもあります。新宿での挨拶に含まれなかった内容もあります。)

 

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東宝映像事業部の弭間友子(はずまともこ)さんが進行役として登壇され、続いて新海誠監督が拍手のなか登壇された。
新海:弭間さんとは3年振りですね。言の葉の庭のプロモーションのとき以来です。

お話の前に弭間さんから撮影OKの件が切り出される。
弭間:新海監督の計らいで、舞台挨拶中の写真撮影OKとなりました。スマホの電源を入れていただいて、写真を撮られてツイッター等で流していただいて構いません。
新海:ツイートする内容については、ネタバレだけはご勘弁頂くようお願いしますね。
(会場の入口には写真撮影禁止のお断りの掲示があったので、この対応には客席の反応はすごく良かったし、みんなスマホやデジカメを取り出してひとしきり撮影大会になった。監督も僕も撮らせてねって仰って、舞台の上から客席に向かって撮影をされていた。この画像のいくつかはツイッターにアップされている)

 

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撮影が終わったあと、監督のお話が始まった。
(以下、弭間さん(=Q)が質問を出し、それを新海さん(=A)が答える形で進められる。)

Q.今回の作品の着想は
A.クロスロード(Z会のCM)からですね。(*1)
「クロスロード知ってる人?」
(と客席に向かって新海さんが質問すると、挙手が結構ある。)
流石、封切り日初回上映に来られる方は訓練されてますね(笑)。(*2)
田中さん(田中将賀)と話して、もっとこの話を拡げられるのではと。(*3)
2014年に川村元気さんと話をして、「君の名は。」の製作へ繋がっていきました。(*4)
この作品「君の名は。」の重要な観点は、
・出会う前の少年・少女を描くこと
・夢で出会うこと(小野小町の和歌にもあるような)
2014年7月に東宝CoMix Wave Filmsに話が上がり、ここから脚本を書き始めていきました。

 

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Q.神木さん(神木隆之介)はどうでしたか?
A.神木クンは、秒速5センチをよく見ているそうです。
客席に向かって「皆さんは何回くらいDVDをみましたか?10回以上のひと?」
(ちらほらと挙手がある。)
神木クンは30回見たんだそうです。30回ですよ!
タカキがカッコイイので、神木クンはいつもタカキのセリフをしゃべっていたそうです。
萌音(上白石萌音)さんについても触れないと。萌音さんは、オーディションのときは、18歳で三葉と同じだったんです。細くて真っすぐで針のような差し込まれる感じがする声でした。その声を聴くと好きになってしまいました。

Q.RADWIMPSの音楽は?
A.1年半前に洋次郎(野田洋次郎)さんのことを川村元気さんに話したら、元気さんから『(僕は)知り合いだよ』って軽く言われた。(TOHOシネマズ川崎では新海監督は「ギョーカイに通じている風なチャラい言い方で『知り合いだよ』と言われた」と発言されてました。)
話を持って行ったときには、もう既に音楽を”お願いする”というよりも、”やるしかない”という雰囲気になってしまっていた。
前前前世スパークルはすぐに決まったけど、OPENING曲と、ENDING曲はなかなか決まらなかった。4、5曲は書いてもらった。これはもう”離婚の危機”(*5)という感じもあった。
でも、同じ方向に向かっているんだという内容のメールを洋次郎さんからもらったりした。僕(新海さん)と洋次郎さんは離れた場所にいるけど、まるで、瀧と三葉みたいな(お互いのことを慮る)感じがしていました。
4曲のVOCALは過剰すぎるかなとも思っています。

 

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来場者の質問コーナー(3名)
Q1. 新宿が舞台として登場するのはなぜ?
(例:須賀神社の階段のところが登場する等)
A.自分が実際に住んでいる場所の近くで、この辺りには自分の生活感があり、瀧の生活感を理解し表現するのに都合がよかった。
作中には何度もすれ違いのシーンを入れてて、須賀神社の階段でもそのすれ違いを演出するのに用いた。
あの場所は四谷の大通り(新宿通り)や外苑大通りからみると、窪地になっていて、眺めがいいところなんです。(*6)

Q2. RADWIMPSのファンの方(女性)
(質問というよりもほとんどRADWIMPSを使われたことの感謝の言葉でしたが(略))
RADWIMPSのリーダーが洋次郎さんではないことを私(質問者)が指摘させて頂きました。
A.ああ、そうでしたね。ずっと、洋次郎さんがいっぱいしゃべるので、洋次郎さんがリーダーだとばかり思っていて、指摘されるまでは知りませんでした。

Q3. ユキちゃん先生と言の葉の庭のユキノさんとのつながりは?
A.はい、意識はしているのですが、2013年の時点では、微妙に時間があっていないので、パラレルワールドの世界の人みたいな感じとして捉えていただければと。

Q.以上で、舞台挨拶が終了ですが、最後に監督からひとことお願いします。
A.僕(監督)は、今日のこの初日の初回の上映の舞台挨拶を楽しみにしてたんです。
よく訓練された方々が来てくれてどういう反応をしてくれるかを知りたかったんです。
今日はどうもありがとうございました。
(舞台挨拶はここまで)


注釈
*1: Z会のCM(クロスロード)の映像はこちら
*2: ”訓練されている”は新海誠の作品をしっかり見ていて掌握している、意識の高いというような意味
*3: 田中将賀さんは、クロスロードのキャラデザを手掛けている
*4: 川村元気さん:映画プロデューサー
*5: うまく折り合いがつかない、一緒にやっていけないの意味
*6: 眺めはいいですが、イメージイラストのように、背景に六本木ヒルズなどの風景は望めませんので。遠景のビル群は合成イメージです。

 

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(以下、筆者のコメント)
筆者は、一般公開における最初の質問者(上記Q1)という名誉を結果として与えて頂き恐縮し、感謝しています。
しかしながら、緊張して言いたかったことがうまく伝えられなかったことを少し残念に思っています。
ここに、再度、筆者の質問の前振りとして言葉足らずだった部分の真意を述べさせていただければと思います。

筆者の舞台挨拶での質問(前振りの部分):
(舞台挨拶のときの発言)
ビジュアルイメージの第2弾のあの階段の画像が公開された週の週末にそのモデルの場所(須賀神社の階段)を見つけて、そこで写真撮影してるときにCoMix Wave Films の社長に(偶然)お会いしました。

(実際に言いたかったこと)
ビジュアルイメージの第2弾の階段の画像が公開された週の週末にそのモデルの場所(須賀神社の階段)を探し見つけて、そこで写真撮影してるときに、後ろでスーパーカブに跨がったタオルを首に掛けた新聞配達の方っぽいお兄さんがじっと、こちらの撮影している姿を見ていました。
撮影が一段落付いて、こちらから「ここは映画のシーンに出てくる場所なんですよ」って説明しつつ声を掛けたら、なんとその方はその映画を製作しているCoMix Wave Filmsの社長(取締役)の川口典孝さんと名乗られたのです。
川口さんは新海監督のマネージメントなどをしているとの説明をされました。
(筆者は最初は、コミックスウェーブ?と聞いてコミックスを販売している会社なのかと勘違いしてましたが、その場でWEBでお名前を検索して驚きました。)

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f:id:haimidori:20200511224627j:plain川口さんから、最初に訊かれたのは、「よくここが判りましたね?」という言葉でしたが、
筆者は、「新宿区ぽいなって、当たりを付けて探してすぐに見つけることができましたよ。」と答えました。
さらに、「そんなことをしている人を少なからず知ってますよ。」と付け加えました。
川口さんからは、「そういう楽しみ方(趣味)っていいな」って言われました。

そして、今度は川口さんに次の質問をさせて頂きました。
筆者:「なぜ、この場所(須賀神社の階段)を選んだんですか?」
川口さん:「僕はここの近くに実家があってよく来るんだけど、新海さんがなんでここを選んだのかは知らないなあ。彼は、『ここに決めたよ』って、あとで報告だけされたんだ。」
このときの質問の続きが、今日の筆者の質問だった訳です。

川口さんには、他にもいろんなお話をお聞きしましたが、今日ここで会って、いろんな話をしたことについて、秘密な内容もあったかもしれないので、その内容は口外(ツイッターなどを含む)しないでほしいと言われました。なのでその他のお話については記しません。

というわけで、今回の映画製作に深く関わっている会社の社長と偶然にもその登場シーンの実際の場所で出会ってお話しをするなどという奇跡のような出会い(出来事)も一切口外せず、ひたすら公開の日を待ち続けました。2ヶ月は長かったです。
今日、そして封切り日の初回にこの映画を観ることができて本当によかったし、予想通りというよりも、予想を遥かに超える作品の素晴らしさに触れることができました。観賞中は涙が止まりませんでした。その涙は哀しいものではなく、魂を揺すぶられる感動の涙でした。
ここに改めて新海監督、製作スタッフ、マネージメントなど作品に関わった全ての方へ感謝の気持ちを伝えたいと思います。素敵な作品をありがとうございました。もちろん、川口さんにも改めて感謝いたします。ありがとうございました。
小説はこれから読みます。関連の冊子(公式ガイドブック)もしっかり読みます。そして、また、これからも何度も何度も映画館に足を運びます。
(もちろん、映画が待ちきれなくて、小説を先に読まれた方も多いでしょう。あるいは予習のかたちで読まれた方も多いかと思います。映画の楽しみ方は人それぞれですが、要は自分のスタイルをしっかり守って楽しめればよいということに尽きると思います。)

舞台挨拶も(すべての映画館で)観賞後の時間に設定されており、同じ回の客席内ではネタバレは基本存在しないので、安心して質問や監督の作品の内容についてお話ができてよかったです。他の映画において、一部の舞台挨拶付きの上映では、効率のために、観賞後と観賞前の回の2回を実施するというやり方が取られているのも見受けられますが、結果、俳優さんの挨拶が中心になってしまうというあまり好ましくない状況もあるようです。今回の舞台挨拶は1館1館監督が上映後にお話をするという丁寧な対応がされており、非常に嬉しく思いました。


おまけ1:
あの階段で撮影をしたあと、須賀神社でお参りをしました。作品のヒット祈願はもとより、作品公開までつつがなく進むようにお願いをしました。
(この須賀神社が本編に出てくるのかは、観賞前では判らなかったので、この須賀神社のことも今までツイート等は一切して来ませんでした。結果、杞憂に終わりましたが)

f:id:haimidori:20200511224705j:plain本殿の向かって右側に社務所がありますが、そこに一匹のグレーの毛色の猫がいるのが見えました。筆者が手招きすると、猫がこちらにどんどん近寄ってきて、筆者のパンツにまとわりついてずっと離れなくなりました。そのため筆者のパンツは毛だらけになってしまいました。

 

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でも、なんで、筆者が招き猫みたいに手招きして、それに応えて猫が筆者にまとわりついたんだろうって不思議に思います。実はこの猫は筆者に何か言いたいことがあったのではないかと。前世はなんだったんだろうって。(この猫は社務所で飼われているようでした)


おまけ2:
筆者は、翌日のTOHOシネマズ川崎での舞台挨拶上映にも行ってきました。

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監督のお話は、前日の内容とほぼ同じでしたが、前日の練習の成果か、この日はよどみなく、また多くの情報をお話になられました。
ここに前日話されていなかった主な内容をレポートに付け加えさせて頂きます。

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新海誠監督舞台挨拶レポート(簡略版)(2016年8月27日 於TOHOシネマズ川崎SCREEN5 09:30の回上映後)

新海監督の発言の要約:
○僕たちの人生はまだ出会っていない人(出来事)との"出会い"の積み重ねである
だから、”可能性の前日”にいる少年、少女の"出会い"(新たな経験、一歩踏み出すこと)の後押しにつながったらいいなと、そんな後押しができるような物語を作りたいと思ってやってきた。
○神木クンはカワイイ
神木クンを使っている細田守さんや宮崎駿さんと自分とどの監督が好きかって訊いたらごまかされた。
彼が三葉になっているときは、内股になって「キャッ」とかセリフを言ってるのをみて、本当に成りきって演じているんだなって。
声に感情が乗っている。目をつぶっていても彼の声だとわかる声のキャラクターがある。
RADWIMPS
前日、テレ朝のMステでRADWIMPSが出演してるのを監督は、スタッフの方と一緒に見て感激してたとの感想をまず述べられました。
客席に向かって「昨日、Mステ見た人?」
(挙手されたのは前方の席の人達を中心に、全体としては2割弱くらいでした。)
僕(監督)は、元々、RADWIMPSが好きだったんです。なので、彼らに曲を作ってもらいたかった。
前前前世スパークルはすぐ決まったんですが、OPENING, ENDINGの曲がなかなか決まらなかった。
やはり、全身全霊を傾けて作った作品を否定されるのはアーティストとしては嫌なことだと理解はしているのですが、作品にマッチしているかの観点での妥協はできないので、その曲を納得いくまで作ってもらうというのは本当に大変なことで何度も"別れの危機"(離婚という表現で前日していた)が訪れたりしていた。
この映画の疾走感もRADWIMPSが作ってくれたものだと思っている。
○スタッフについて
田中さん(田中将賀)というTVアニメの中心にいる人と、安藤さん(安藤雅司)という映画作品の中心(ジブリとか)にいる人の融和により、田中さんのシャープさと映画の普遍性が一体となった、他の映画にないケミストリー(*1)が作り出せた。
背景美術の方々にここで再度お礼を述べたいと思います。

 

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時間が押したので、一般質問は1人だけになりました。
Q. これまでの新海作品は、すれ違いのまま終わってしまうのが通常だったのですが、今回、"これまでとは異なる終わり方"(*2)になっていますが、それはどういう心境の変化なのでしょうか?
A. (雪の)歩道橋の上でのすれ違いシーンは、これまでの新海作品のファンの方のためのものです。(会場、笑いと大きな拍手)。(*3)
最初から、この作品はこれまでの作品とは異なるENDINGにしようと決めていた。それはやはり2011年のあの震災の影響です。
あの震災では多くの人がまた会えればとか、戻れればとかという願いや祈りが本物(嘘偽りのないもの)であることを実感してきました。
なので、そういうことを見て来たから、出会いを大事にしていきたいと思って作品を作りました。そして、そういう作品を作れてよかったと思います。

舞台挨拶の最後に
○次回作について
次は3年後くらいかな。3年って長いですよね。でも大変なんですよ。皆さんも(製作を)やってみるとわかりますよ。(会場:笑)

(監督の製作の長い苦労の連続をみんなに理解してほしかったとの気持ちが現れた瞬間でした。新海監督本当にお疲れ様でした。そしていい映画をありがとうございました。公開されたばかりではありますが、3年後にまた素敵な作品を観られることを期待しています。)

*1: ケミストリーをどういう言葉で説明したらよいのかは正確にはわかりませんが、原義は化学反応ということです。最近は、チームワークなどの結束力を示す言葉として用いられていますが、ここでは、2つの異なる要素が高度に反応して新たなモノ(カタチ)が生成されたという風に捉えるのが適切かなと思います。
*2: ネタバレになるので書きませんね。
*3: このシーンは、これまでのENDINGパターンを愛している新海ファンの皆様へのサービスであるということです。ここで、視聴をやめれば、いつも通りのカタチになりますね。

(2016年8月26日、8月27日撮影、須賀神社周辺の風景は6月26日撮影)