はいみどりの世界

すてきな記憶を忘れないために

スカイヤーズ5 (隼太郎のモデルは?!)

 

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昨年(2014年)9月に東京都練馬区大泉学園駅の近くにある東映アニメーションの建物内にある東映アニメーションギャラリーに行ってきました。(現在は閉館中)

 

 

 

 

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東映アニメーションアニメ製作会社として誰もが知っている老舗であり、現在はプリキュアシリーズなどのTVアニメで有名ですが、最初はアニメ映画の制作部門(当時は東映動画)して設立され、白蛇伝など日本のアニメ映画の草創期を飾る多くの作品を作ってきた会社です。高畑勲さんや宮崎駿さんもこの会社に入社されています。

 

 

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1963年の鉄腕アトムのヒットに伴い、この東映アニメーションもTV向けの作品を作ることになり、その第1作が狼少年ケンです。
筆者は放送当時に狼少年ケンを視聴しており、鉄腕アトムも含め、いつもアニメーション作品の放送を楽しみにしていたものでした。

 

 

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今回初めてこの東映アニメーションに訪れ、入り口に立って、この建物内で様々な作品が製作されていたことを思い浮かべると感激もひとしおでした。

 

 

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館内に入り、廊下を進むとこの展示室があります。部屋に入ると壁には歴代の東映アニメーション東映動画)作品のパネルがずらりと並んでおり壮観でした。壁の上には歴代のプリキュアのスタンディが並んでおり、そちらも壮観でした。(この写真は許可を得て撮影しています)

 

 

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当時のTV視聴の雰囲気を出すためモノクロ映像を表示したブラウン管テレビを畳の部屋(いわゆる茶の間)に配置したコーナーや、当時の作品の台本やイメージボードが展示されておりました。
館内の入り口にいらっしゃった初老の方に声をお掛けしてみたところ、この東映動画のOBの方で、昔、狼少年ケンの製作に携わっていたとのこと。筆者は思わず、「(放送時)ずっと観ていましたよ!」と伝えました。
狼少年ケンの主人公のケンの作画もされていたようで、その方がポツリと「この口のところがちょっと厭でねえ...」と仰られて、幼心に自分も当時そう思っていたことを伝えました。(*4)
自分で動画を作成する作業のなかで、決められたデザインどおりに描かなければならないことが気になっていたんでしょうね。この独特の口(唇)の表現、ドーナツのような、タラコの唇なんですが、よく黒人(こう書いてはいけないーアフリカ系の方と書くべき)のステレオタイプ的な表現をよく見かけます。
そういえば、京アニの「たまこまーけっと」の南の島の王子のお付きの人の顔の表現にもこのかたちが出てきてましたね。(第12話ーー過去記事参照)

館内の別室にはアニメのタイアップグッズの展示コーナーもあり、貴重なものが沢山並んでいました。(こちらも残念ながら写真撮影不可でした)写真撮影は等身大のこのプリキュアコーナーのみが撮影可能でした。

 

 

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(室内の様子は、リンク先に東映アニメーションギャラリーのページが残されていますのでご覧ください)
なお、これらの建物はその後、全て撤去され現在、現在更地になっているようです。ここに新しい建物が出来た折りにはこのアニメーションギャラリーが再オープンし、これらの展示物が再び見られるようになることを期待します。

さて、ここを後にして、夕方遅くに世田谷邪宗門にお邪魔しました。
マスターに「今日はどこ行ってたの?」って訊ねられたので、この大泉学園東映アニメーションのお話をしました。マスターがお店を開店されたのは1965年の末であり、すでに30歳になられてたので、さすがにTVアニメ(当時はTV漫画と呼ばれていた)を観るということはほとんどなかったご様子でした。
東映動画が関わっていた当時のアニメのタイトルをいろいろ挙げながら説明しているうちに、急にマスターが
「思い出した!」
「自分はアニメの製作に呼ばれたことがあったんだ」
そこにいた私とヨネミットさん(常連客)が思わず、「エ~?」と声にならない声を。
「『スカイヤーズ』だったかな」
自信なさげにマスターが仰る。
早速、ググってみると「スレイヤーズ」ばかりが出てくる。スレイヤーズは最近の作品なので当然違うものです。ようやく、YouTubeに1件ヒットし、早速それをみんなで見てみることに。(*1)(*2)
主題歌(OP?)をTV(ブラウン管のような)画面を直接ビデオカメラで撮影したようなもので、非常に見辛いものでしたがヨネミットさんはこのアニメを見たことがあるのを思い出した様子。
そして、マスターは目ざとくクレジットの中に
「ほら、ここに『まゆみてんせい』ってあるよ」
真弓典正(まゆみてんせい)は、かつてこの邪宗門の常連客でした。
(ちなみに、典正は「のりまさ」ではなく「てんせい」というのが正しい読みです。本人が邪宗門に来店するときに「てんせいです」って言いながら入ってきたそうで、それを周りの人には「せんせー」って聞こえたようで、真弓先生と呼ばれていたようです。
スカイヤーズ5は真弓典正が脚本を書いた知る人ぞ知るアニメですが、この時間枠の前の番組のエイトマンやスーパージェッターに比べると通好みの番組だったようです。筆者はどちらも好きですが、残念ながらスカイヤーズ5は見た記憶がありませんでした。

真弓典正放送作家(脚本家)をされていて、川内康範の弟子でした。川内康範の作品は「月光仮面」はもとより非常に多く存在していることがわかります。一方、真弓典正の名前の作品は残念ながらほとんど見つけることができませんが、「鉄道公安36号」というドラマがそこそこ有名らしいです。(筆者は残念ながら見ていない)
アニメでは、この「スカイヤーズ5(ファイブ)」が唯一発見できるタイトルです。

 

 

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さて、このOP画像には、主人公の隼太郎(S5号)(はやぶさたろう)が左手に持ったトランプを右手で手裏剣のように飛ばすカットが1度だけ出てくるのですが、実はこのモデルをマスターがされたとのこと。
マスターはご存知のように手品が得意で、この真弓典正さんにもそのことが知られていたので、スカイヤーズ5の脚本を書くにあたり、マスターを参考にしたに違いないと思われます。

そして、当時(おそらく1967年の前半)、真弓先生に頼まれて、一緒にとある場所に連れられて行き、そこで、多くのデッサンを行うアニメ制作の方々(若い男女)に取り囲まれて、様々なポーズをされたとのこと。
その場所がどこだったかをお訊きしたのですが、
「あっち」
と店の外の右手の方向を指差すばかりで、具体的な場所やアニメ会社などの情報は一切判りませんでした。

この日はお店の閉店後にこのような話をしてひとしきり盛り上がりましたが、いずれもう少ししっかり調べると色々詳しいことがわかるだろうとタカをくくっていました。しかしその後、ネットで検索しても流石に1967年の作品の情報はほとんど存在せず、散々調べた結果、エイケンサザエさんで有名)制作ではなく、モノクロ時代に制作されたのが、TCJという会社であることが判りました。
ただ、このTCJがどこにあったのか皆目見当がつかず、また、作品も少なく、このスカイヤーズ5に関する情報は何も見つかりませんでした。(*5)
この年の末にスカイヤーズ5の件に関して進捗のないことをマスターに伝えました。この日、マスターはトランプを飛ばす仕草を当時を思い出しながらシーンを再現してくれました。

そして年を越して2月末、地道にネット上で調査をしていたら、スカイヤーズ5のDVDが発売されるとの情報が発表されているのが見つかり、Amazonで早速予約しました。但し発売は4月とのことで本編が見れるのはまだ先でしたが、これでようやくマスターがどんな風にアニメに関わっていたのか、また、クレジットをより詳しく見ることができると期待しました。

そしてDVDが届いたのは4月24日。
早速、本編を再生してみる。
OPが流れる、クレジットが全くない...。
最後にTCJの文字が大きく出て、そのあとTBSの文字が。
たったこれだけ、しかもEDはありませんでした。
DVDは4枚組で、モノクロ時代の15話(未放送分3話を含む)とカラー時代の12話が収載されています。
カラー時代のOPではTCJの代わりにエイケンの文字に変わっていただけで基本は全く同じ。
付属の解説書にもクレジット関連の情報は既出のものばかりの簡単なもので、真弓典正の文字すらありませんでした。
密かにクレジットのなかにマスターの名前があるのを期待していたのだけれども...。
本当に何も新しい情報が得られませんでした。(*3)
しかし、気を撮り直して、第1話、続いて第2話を再生してみるとそこにはトランプを使ったシーンが!
これは早くマスターに見て頂かねば。

その週末にDVDを持参し世田谷邪宗門にお邪魔したのですが、マスターは体調が急に不調になられたようで、その日は見て頂くことができませんでした。お店にDVDを預け「いつでも見てくださいね」と言い添えて。

1週間後の5月の初めに再び、邪宗門を訪れて、DVDを見て頂けたかをお訊きしたら、まだ見ていないとのこと。私(筆者)と一緒に見たいということで、そのために見ていなかったとのこと。なんか気恥ずかしくもあり、ちょっと嬉しいなとも。
早速、マスターと持参したDVDプレーヤーで席で見ることに。

 

 

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マスターは無言で見ている。マスター自身もおそらくこのアニメを見たことがなかった様子。

そして、第2話のトランプを扱うシーンが出てくると、食い入るように見ている。
カードを右手から左手に移動させたり、カードを飛ばしたり、カードを消したり。
マスターの日頃の手さばきを正にアニメで再現している。

 

 

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マスターの奥様、敬子ママも一緒に見ている(皆さん初めてこのアニメを見る)

マスターはさらに、ゴースト(悪の組織)の首領(顔は出て来ない)のコイントスのシーンを見つけ、こんな感じかなとポケットから取り出した手品用のコインでコイントスを始めた。
このシーンもマスターが実演したものらしかった。

 

 

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隼太郎のトランプのカードを使った手裏剣のような必殺技はマスターの華麗な手さばきがなければ生まれなかったとあらためて思いました。

 

 

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実演1:複数のカードを飛ばす

 

 

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実演2:1枚のカードを投げる

 

 

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実演3:手裏剣のように素早くカードを連続的に飛ばす

次の日、マスターが何気に指差した方向は西の方向だったので杉並(南阿佐ヶ谷)の方向かなと考え、当時の杉並区の住宅地図を探してみたり、杉並アニメーションミュージアムに伺って、館内の方にアニメーション会社の情報がないかをお訊きしたのですが、そのような情報は特に収集していないとのことでTCJの所在地に関しては暗礁に乗り上げた状況でした。

 

 

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6月中旬、YouTubeで見たOPのクレジット入りのものをふと見つけることができました。
Amazonで以前から発売されていたエイケンクラシカルというCDは知っていたのですが、これにDVDが付属していることにこのとき初めて気が付き早速注文し、見てみるとYouTubeで見た画像と同じでした。ただし、こちらはカラー映像だったので、やはりYouTubeで見たものは随分昔に発売されたことのあるセルビデオ(ビデオテープ)を再生したものだろうと思われました(未確認)。しかし、残念ながら、最初にYouTubeで見たとき以上のクレジットの情報はありませんでした。

そしてさらに調査の結果、TCJは自動車の販売で有名なヤナセの子会社として設立されたということが判り、そのヤナセは港区の芝浦に本社があるので、当時の住宅地図でその辺りを虱潰しに探してみることに。

国会図書館には地図室という部屋があり、多くの住宅地図が所蔵されています。
当時の港区の地図の芝浦のページを開くと、何気に百代橋(ももよばし)の側に「TCJ(株)」の文字が目に飛び込んで来ました。
これはもう見つけるのが偶然というよりも奇跡としか言いようがないくらい小さな文字でしたが、これを発見できたとき、思わずガッツポーズが小さく出てしまいました。

 

 

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赤いテントのあるビルがTCJのあった場所(現在は1階はイタリアンレストラン)

芝浦辺りの別のページには、ヤナセ自動車の大きな敷地が見つかり、親会社からはさほど遠くはない場所だったことが判りました。念のためその辺り一体を小まめに探してみましたが、他には見つからなかったのここでほぼ間違いないだろうと。

そして6月下旬、その日は早めに会社を上がり、先週に見つけたTCJの所在地である「芝浦」という情報をマスターに確認するために邪宗門に行き、直接マスターに訊いてみることに。
例の情報を基に、当時カードの演技の実演をされた場所を再度訊いてみる。
「芝浦とか、田町の駅の裏辺りでしょうか?」
「違うなあー」
そして、前と同様に、お店の外の右手の方向を指差す。
「こっちの方だったよ」
確かに、その方向は西の方向で芝浦の方向(東)ではない。
自信があったのにまた振り出しか...。

お店の中でもう一度考えてみる。方角的にTBSの緑山スタジオ方向だけど、
TBSの緑山スタジオは当時はまだ存在していない。
マスターに確認してみる。
「川(多摩川)渡ってないですよね(川崎じゃないですよね)」
「そんな遠くじゃなかった」

そこで、筆者は閃いた。
TBSの関連施設を調べてみればよいのでは。
そしてとある施設を見つけた。予断を与えないために慎重にマスターに質問をする。
「砧(きぬた)じゃないでしょうか?」
「砧、うん、砧!」
国際放映じゃないですか?」
「そうそう、国際放映!」
ついに謎は解けた。

 

 

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真弓典正は、TVドラマの製作に関わっていたので、製作スタジオにも出入りしていたことが想像されます。
そして、砧の国際放映は、TBSの番組製作に大きく関わっていた会社です。

 

 

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国際放映が入居している東京メディアシティ

TCJが国際放映とどのように関わっていたかは判りません。TBSで放送されるアニメですので、脚本家の真弓典正が制作にあたり、アニメのスタッフのデッサンをおこなう場所としてそこを使わせてもらった可能性は充分有ります。

この記事の最後にこんなことも付け加えておきます。
真弓典正が大きく関わったドラマ「鉄道公安36号」の製作会社は東映東京撮影所でした。その場所はこの記事のきっかけになった場所です。
さらに、この話の発端になったマスターに東映アニメーションスタジオの話をしたときにたまたま筆者が座っていた席は真弓典正がいつも座っていた席でした。
余りの偶然に、もしかしたら真弓典正が筆者を動かしたのかと...。

ちなみに、隼太郎の母親の名前はキクヨです。そして妹の名前はマリです。
マスターの奥様の名前はキクエで、真弓典正のことを片思いしていたのは森茉莉(モリマリ)ですね。
(2014年9月15日、12月28日、 2015年5月2日、5月3日、6月26日、7月12日撮影)

*1:スカイヤーズ5の情報は今年の5月以降にネット上に増え始め、今はWikipediaにもその項目があります
*2:2015年5月23日にTBSチャンネル(TBSのCS放送)でスカイヤーズ5が放送されました。そのためか、twitterで検索するとそれ以降の日付でスカイヤーズ5の情報が出て来ます。
*3:ベストフィールド社からスカイヤーズ5のDVD-box1とbox2が発売されていますが、box2には特典映像としてモノクロ放送時代のクレジットが収録されているらしいです。筆者はbox2はまだ購入しておりませんので、詳細は不明です。
*4:この方は草間真之介さんでした。貴重なお話ありがとうございました。
*5:TCJは、当初、日本テレビジョン株式会社(いわゆる日テレとは全く関係がない)という社名でしたが、「株式会社ティー・シー・ジェー(TCJ)」に社名が変わり、その中の「株式会社TCJ動画センター」がこのスカイヤーズ5の制作に当たっていた部門です。スカイヤーズ5がカラー化された後には、エイケンがアニメ制作部門を引き取ったかたちになっています。そしてTCJの現在の業務はアニメからは離れているようです。