「グッバイ、ドン・グリーズ 」を3週連続で観た後、劇場版ドラえもんを久しぶりに観てきた。
大きな映画館で映画を観る楽しさを久々に味わった後、楽しい映画を観たいと純粋に思ったからと、KAI-YOUのドングリーズのいしづか監督のインタビュー記事の中で大長編ドラえもんについて触れている部分があり、いしづか監督の1つの原点がドラえもんであることを再度確認してみたかったということもありました。
以下、少しネタバレになるかもしれませんので、これから鑑賞される方はそのつもりでご覧下さい。まあ、ドラえもんのお話は基本ハッピーエンドというお約束(予定調和)なのですが。
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筆者は、これまで何度も毎年、春に恒例の劇場版のドラえもんを息子と見てきています。
最後に息子と観てきたのは、2020年に公開された「スタンドバイミードラえもん2」でしたが、これは3DCGアニメでちょっと雰囲気の異なるものでした。
通常の春先に公開される劇場版ドラえもんは、この同じ年、コロナの影響で夏に公開された「映画ドラえもん のび太の新恐竜」です。筆者はこれも観ています。
この翌年の2021年春に公開される予定だった劇場版ドラえもんは1年延期され、今回ようやく公開されたのでした。
そのため、タイトル名には「のび太の宇宙小戦争2021」のように、末尾に2021と付けられています。
今回の「のび太の宇宙小戦争(リトルスターウォーズ)2021」は、1985年に公開された「のび太の宇宙大戦争」のリメーク版です。この「のび太の宇宙大戦争」はいわゆる大長編ドラえもんの第6巻を元に製作されています。
いしづか監督のコメントにあった大長編ドラえもんに繋がる訳ですが、この「のび太の宇宙大戦争」は、「冒頭にすこし不思議な出来事が起きて」とか、「ひと夏の冒険」というストーリーとちょっと雰囲気が異なるものでした。
劇場版ドラえもんの特徴は、ドラえもんを含めた5人が、日常とは違う世界で助け合って頑張るというストーリーが基本なのですが、今回の「のび太の宇宙大戦争」は地球から離れた別の星でのクーデターによる民主政権が独裁者に乗っ取られて、圧政をしいている状況下から大統領が地球に逃れてきて、それを追ってきた独裁政権が大統領を連行しようとし、それを見かねたのび太ら5人が大統領やその国を救うために自分達からその星へ向かうというものなのです。
この映画のストーリーが進むにつれ、元の政府が地下組織(レジスタンス)として、軍事政権に対抗して戦っている姿が描写されたりしているのを観ていると、これは映画の中だけの話ではないと思われてしまいます。
ウクライナと似ているというか、これから、もしもロシアにウクライナが掌握されたら、旧ウクライナ政権側が、レジスタンスとして戦うことになるんだろうなと考えてしまいました。
ドラえもんの映画を見に来ている観客層の多くは、小学1年〜4年くらいではないかと体感しているのですが、現実の世界の出来事と意識している人はどのくらいいたのかなと。
日本では国内で戦争状態にあったことは、もう70年以上存在していないのですが、ウクライナの状況を映像で見るにつけ、その状況下で生活する、生きていくことの異常さを感じざるを得ません。このドラえもんの映画を観た子供たちが、これからの人生の中で戦下で生活することが無いようにと思ってしまいました。
ストーリーの中で、スネ夫が自分が戦うことに対して、恐怖で逃げたくなる心情を吐露したり、しずかちゃんがスネ夫の前ではなく、戦車に一人で乗って、
「このまま独裁者に負けちゃうなんて、あんまり惨めじゃない。やれるだけのことを、やるしかないんだわ」
と自分に言い聞かせるようにいうシーンに、何とも言えない気持ちになりました。
このシーンは、1985年のオリジナル版から変えられていません。
しかも、今回のリメーク版は、当然、昨年公開するために製作されていたので、ウクライナの侵攻を意識していた訳では当然ありません。
パピ大統領の演説のシーンも感動します。
映画を観終わったあと、ウクライナにドラえもんがいたらなあと思いました。
ウクライナに平和が早く訪れて、以前の平穏な生活が取り戻せるように願ってやみません。
おまけ:
1)パピ大統領の愛犬ロコロコのCVはドングリーズのトトのCVと同じ梶裕貴さんです。
2)今作でのスネ夫がヒーローであるストーリーはあまり見かけない貴重なものです。
3)いしづかあつこ監督の誕生日はドラえもんと同じ9月3日です。
(2022年3月13日)