はいみどりの世界

すてきな記憶を忘れないために

マイナス19度でのお湯花火

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小淵沢貴子著書のモデルの本

宇宙よりも遠い場所の第1話では、キマリのお母さんの小淵沢貴子の著書内にお湯花火の画像が出て来ます。(*1)

筆者はお湯花火のことは、このシーンを見るまで全く知りませんでした。

お湯花火のことをググってみると、熱湯を空に向かって撒くことで出来ると書いてありました。ただし、それが出来るのは気温が-30℃以下であることも書かれていました。

南極では-30℃になることもありますが、南極に行くのは簡単ではありません。

なので、先ずは-30℃体験をしてみようと思い、2019年の極地研の公開日の低温室体験に応募しました。そして、運よく抽選に通りました。

 

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極地研低温室ツアー(防寒服を着て廊下を通路を無言で進む)

当日、極地研で用意された防寒着を着て、最初に-20℃の部屋に入り、さらに-30℃の部屋に移動した時、その寒さに顔がこわばるのを感じました。

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氷床コアの実物

ここで、お湯を撒けばお湯花火が出来るかもとその場では空想をしていましたが、もちろん、天井が低い室内で実験が出来る訳もなく(もちろん許可が出るはずはないです)、どこかで-30℃体験が出来ないものかと思いました。

 

ところで、筆者はこの極地研公開イベントでの低温室体験の1ヶ月前に北海道の陸別に行っていました。

陸別町に行ったきっかけは、オーロラ(低緯度オーロラ)が見れる(見れたことがある)場所であることを北海道旅行の直前に知り、海外にオーロラを見に行くのは自分にとってかなりハードルの高いことなので、北海道ならハードルはそれなりに低いのではないかという興味もあってのことでした。

陸別町には町営の天文科学館(りくべつ宇宙地球科学館、銀河の森天文台)があり、そこには、立川市の極地研の南極・北極科学館に展示されていたものと同じ、氷床をボーリングする装置が展示されていたり、南極に関連するいくつかの展示物がありました。

この時は、真冬に再度訪れるということは全く想像だにしていなかったのですが、極地研に行ったあと、この陸別町のことを思い出していました。

陸別町のことを改めてよく調べて見ると、この町は、日本一寒い町というキャッチフレーズで紹介されており、真冬には、-30℃を下回る日もほぼ毎年あることが分かりました。

そしてこれはやはり行くしかないと決心し、真冬の最も寒い時期に陸別に行くことにしました。

 

さて、お湯花火の話に戻ります。

先ずは、筆者が実際に陸別町で実験を行ったお湯花火の画像をご覧ください。

投げ上げた直後の左側の辺りが花火っぽいと思います。そのあとは、全体が雲の塊になってしまっています。(再度、再生するときは、左下のボタンをクリックします)

筆者が訪問したのは2020年の1月末〜2月初めです。例年ならこの時期には-20℃を下回る日が結構あるのですが、陸別に到着してからの2日間は-10℃前後にしか下がらず、このお湯花火の実験がうまく行くかどうかすごく微妙な感じでした。

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気温(-19℃、AM6:25)

陸別町に滞在した最終日の4日目の朝、ようやく-20℃近くまで気温が下がりました。事前に調べていた情報では、-30℃以下でないとうまく行かないというものもあったのですが、とにかくやってみることに。(*2)

持参した細長い筒状の水筒に湯沸かしポットのお湯を入れて、泊まったコテージの玄関先で、空に向かって投げ上げるように、勢いよくお湯を撒いてみました。

「出来た!」

すると、頭の上の方から、

「すげー!」

こんな声が聞こえてきました。

この実験は早朝に一人でやっていたのですが、たまたま玄関の真上の部屋で泊まっていた方が外を見ていて、筆者の実験を間近に見ていたのです。

「動画撮れますか?」

「大丈夫だよ」

筆者は再度、台所へ戻り、お湯を水筒に入れ、もう1回やってみる。

1回目と同様にうまくいく。

そして、さらにもう一度、今度は気持ち多めにお湯を入れて、再トライ。

「うまく撮れた?」

「バッチリ!」

スマホでしっかり撮影して頂いた3回目の実験の画像がこの動画です。

 

マイナス20度でも大丈夫だし、南極行かなくてもお湯花火が出来ることが分かったのでした。真冬に陸別に来た甲斐がありました。何事も先入観を持たず、トライすることが大事と改めて思いました。

そして、その時の画像も動画で記録出来たのも幸運でした。筆者は録画のことまで考えていなかったので、これは予想外に嬉しかったです。

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実験に使った水筒(キャップは外して使う)

オレンジ色の水筒(容量は350cc)ですが、断熱されていないので、熱湯を入れると素手では持てないくらい熱く、台所にあった料理用のミトンで持って実験しました。

お湯の温度は湯沸かしポットのお湯を使ったので、おおよそ90度くらいです。(*3)

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陸別町の紹介パンフレット

この実験のあと、陸別を離れる直前に道の駅にあった陸別町の紹介パンフレットを入手できたのですが、その表紙はなんとこのお湯花火でした。(柄杓でお湯を撒いているようです。この時の気温は記載されていません)

 

(*1:小淵沢貴子が著した本のモデルになった田邊優貴子著のこの本「すてきな地球の果て」には、お湯花火の画像は存在していません)

(*2:この日の陸別町の公式最低気温は-22.8度(2020-2-3, 6:34)で、日本一寒い場所でした)

(*3:お湯花火の実験に使うお湯の温度は高いほど良いらしいのですが、危険ですので、近くに人のいない広い場所で充分気をつけて実験してください。筆者自身も自分の身体に熱湯が降って来て、被ったらどうしようかと半分こわごわ実験していました)

(2020年2月3日撮影)