宇宙よりも遠い場所(第5話)で、キマリが早朝、館林の自宅から成田空港へ向かうシーンが登場します。
空港でのシーン、例えば出発ゲート横の矢印が並んだ案内板とか天井の模様などから、出発したのは成田空港であることがわかります。
シンガポールへ向かう便のモデルは、出発時刻、機内風景、飛行機のデザインからシンガポール航空のSQ637(成田発:11:10)のようでしたが、空港に到着した後(第6話)、出発ゲートを通り、出国審査、そして、ゲートへ向かうシーンについてなど、総合的に考察して、C95(2018年冬コミ)で拙著「小淵沢家のひみつ」では羽田空港説にも触れました。
成田空港発(SQ637)としての疑問点は、以下のものでした。
1)SQ637の機材はB787-10である(放送開始時から拙著記述時(2018年12月)、そして現在も)
2)シート背面のモニタ周りが作中のものと異なる
3)窓側席が2列である
4)この便のシンガポールの到着時刻では、ホテルに寄ってからマーライオンに行くと日が暮れてしまう
5)SQ637の出発ゲートは45番ゲートだが、通路から見ると、通路に直角に飛行機が駐機しない(はず)
これらの疑問点の基本は、1番に挙げた、飛行機の機種(機材)が異なるということです。
拙著執筆当時、成田と羽田の午前便のみを比較した結果、羽田説(SQ631)も挙げた理由は上記の2、4、5において羽田なら作中に合うと考えたからです。
その後、この飛行機のモデルの検証を1から再度やってみようと色々調べました。
その結果、SQ637(成田空港発)をモデルとしていると確信しましたので、その検証内容を改めてお伝えしておきたいと思います。
作画の飛行機の外観をよーく見てみると、窓が2列(2段)になっています。(皆さんはとっくに気が付いてますよね)
2)シート背面のモニタ周りが作中のものに似ている
拙著では、B777-300ERのものが似ていると記載しましたが、ドリンクホルダーの位置が左右逆でした。A380が合致します。その他のパーツもB777-300ERは結構似ているのですが、細かい部分ではやはり異なっていました。
3)A380の2階のエコノミー席は窓側が2列である
A380のエコノミー席は1階と2階にありますが、1階席は窓側は3列です。
B787-10もB777-300ERも窓側の席が3列なのは同じです。なので、脚色かなと思っていました。
しかし、このA380には2階席にもエコノミークラスがあります。この2階席では窓側は2列ですので作中と合います。
4)(後述します)
5)45番ゲート脇の通路から見ると、通路に直角に飛行機が駐機する
筆者が間違えた理由は、成田空港の見取り図から、飛行機の駐機位置を割り出したためでしたが、実際の画像(このブログ記事)など、もっと確認すべきでした。(探せば見つかるんですね)
という訳で、羽田説は取り下げます。申し訳ありませんでした。
A380の機内の写真(2階席のエコノミークラス)については、こちらのブログ記事が詳しいです。この記事の末尾の辺りに、シート背面のモニターなどもはっきり見えています。
では、なぜ、作中の飛行機はA380だったのでしょうか。
放送開始時点では、前述のようにSQ637はB787-10でした。
しかし、2016年10月22日まで、実際にA380が使われていたのです。
なので、A380を機材に採用したのは以下のような理由(経緯)だったと思います。
1.作品のイメージに合わせるために、この窓側を2列席で作画したかった。そのような機材を探し、見つかったA380を作画に採用した
2.スタッフが以前に搭乗した機材がA380で、それが窓側は2列席だった。その時の資料を元に作画した
いずれにせよ、他の機材(例えば、B777-300ER)の資料を混ぜたりせず、A380の資料のみを参考にして作画しているスタッフのリアリティに対するこだわりに改めて敬服いたします。
そして、朗報です。
2019年の4月28日から、SQ637の機材がA380になります。
GW中は流石にもう予約は無理でしょうが、その後は作中と同じ飛行機に搭乗可能になります。なお、これは夏ダイヤの期間だけで、10月27日までのようです。
ただ、このA380の機材も、7月からはA380Rと呼ばれる機材に変更になるようで、2階席の窓側2列エコノミー席がなくなってしまうかもしれません。7月以降にシンガポール巡礼をお考えの方はご確認されると良いと思います。
さて、話を戻します。
(疑問4)のシンガポール到着時刻の問題ですが、これは、作中では、土曜日にシンガポールに到着して、月曜日にフリーマントルに向けて出発する(パース行きの飛行機に乗る)という過密な日程もあり、到着後にマーライオンまで行ってしまうという流れを組み込むには、到着時刻を現実にあり得ない時間にしたのはしょうがなかったということでしょうね。通常、成田からシンガポールへは6時間半かかるところを4時間くらいで移動することで、現地時間の午後2時くらいに到着したことにします。(このことに目くじら立てないで頂ければと思います)
また、シンガポールと日本の時差が1時間あるのと、さらに本来の時差の地域よりも西にシンガポールが位置していることにより実質2時間日が暮れるのが遅くなるのですが、全く間に合いません。(拙著でも述べましたが、少し早い羽田発(SQ631)でも川下り込みではちょっと厳しいです)
そして、以下のような時系列でストーリーが進行します。
(時刻は筆者の推定:現地時間)
14:00 空港着(日本を午前中の明るい時間に出発する便はこの時間に到着しませんが)
15:00 MRTオーチャード駅上の交差点
16:00 道草しつつオーチャードホテルに到着
16:30 ホテル出発
17:20 川下りの船に乗船
17:40 マーライオンで記念撮影(日差しの感じから18時以前と推定)
このあと、しばらく市内観光していたと想像。
(シンガポールでは20:00頃にようやく暗くなる)
20:00 大盛りチャーハンを食べる(Boat Quayエリアのこの中華料理店)
(このお店から、マリーナベイサンズへ移動するのは徒歩では時間がかかり過ぎてちょっと無理なのですが、ここもストーリーの「イメージ優先(*1)」でマリーナベイサンズの近くにお店があるという設定にしていると思われます。徒歩で10分くらいの距離でないと、21時の2回目の噴水ショーに間に合わないのと、チャーハンをお腹いっぱい食べるのに時間が掛かり、そのあとMRT(地下鉄)に乗って移動するのも不自然な感じがします)(この件に関しては別記事で)
21:00 SPECTRA(噴水ショー)を見る
21:30 展望台へ登る
23:00 オーチャードホテルへ戻る
筆者は、この日程をトレースすることを意識して、シンガポールに少しでも早く到着する羽田発のSQ631(シンガポール着:15:45)を利用し、道草せずにホテルに到着しましたが、到着当日の明るいうちに川下りをしてマーライオンまで行くのは無理でした。
けれど、やはりキマリみたいにシンガポールに着いたら、早くマーライオンを見たくなったので、翌日の下見も兼ねて、夜のマーライオンを見に行きました。
皆さんも、ぜひ、このスケジュール表を参考に4人の足取りを辿ってシンガポール聖地巡礼を楽しんでくださいね。
*1: 「イメージ優先で」ですが、筆者は昨年春アニメイト横浜店のBD第1巻発売プロモーション時に第1話の絵コンテが展示されているのを見ました。その中に、おそらく、いしづか監督のコメントで、以下のように記されていたのを記憶しています。その部分には、実際(実在)の場所と合致しない場面に対して、「イメージ(ストーリーの流れ)を優先で」(現実世界との矛盾(不一致)は気にしないで)という意味で書かれていたのに、ちょっと得心があったのを覚えています。
聖地が実在の風景や事象と異なっても、ストーリーとして自然な流れを優先するという監督の考え方は作品のかたちを大事にするというものであり、それは当然だと思いますし、筆者はそれに共感します。
もちろん、あまりに現実の風景を改変しすぎると、リアリティが失われるきらいもありますから、そこはほどほどであるに越したことはありませんが。
実在の聖地が作中の世界と細かい点で異なることを殊更気にされる方もいらっしゃるようなので敢えてここにそのことについて書き留めておきたいと思います。
(2019年3月13日)